マイバッグ、50回使えば効果

エコグッズ使いつつ無駄買い…危険な「根拠なきエコブーム」

使い捨て社会は持続不可能

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 「地球のためにマイタンブラーを始めました」という声をソーシャルネットワークサービス(SNS)上でよく見かける。タンブラーやマイバッグを使う「エコ生活」は流行のように広まったが、果たして本当に地球に優しいのか。エコのキーワードは「持続可能」だ。使い捨ての袋や容器のために資源を使い続け、地球温暖化の原因になる二酸化炭素(CO2)を出し続けるという社会は、永久には持続できないと、環境政策を追究する公益社団法人「地球環境戦略研究機関(IGES)」の専門家は指摘する。エコバッグやタンブラーは短期的には生産コストや資源を多く使うことを念頭に、レジ袋やプラスチックのカップよりも環境負荷を減らすには、短期的で捨てず、繰り返し使い続けることが肝心だという。

 IGESは、政府が呼び掛け、神奈川県の支援を受けて作られた機関だ。環境面の革新的な政策や戦略を作り、地球規模、特にアジア太平洋地域の持続可能な開発を図る。IGES主任研究員の粟生木千佳さんとリサーチマネージャーの劉晨さん、広報の杉原理恵さんは、エコ的な物を使うことで他の物は多めに買っても良いという考えになってしまえば、「根拠のないエコブーム」となり、逆にとても危険だと指摘する。

実はマイバッグは環境に負担?

 粟生木さんは、本来のエコ生活について「より少ない資源で現在の生活の質を維持しながら暮らしていく」ことだと定義した。

 地球温暖化の傾向は一気に逆転できる状態にない現在、せめて「地球の温度が上がる範囲をいかに小さくするか」を意識することが肝心だと、杉原さんは指摘する。

取材に答えて話す公益社団法人「地球環境戦略研究機関(IGES)」の専門家ら(2021年7月14日午後1時)撮影=金ハンギョル

 そして劉さんは「問題意識が大事で、実は地球のためにエコ生活をするのではない。広義で考えてみると、地球温暖化や資源不足の問題は私たちの生活に直接関わっているものなので、自分自身のためにエコ生活をやるべきだ」と言う。

マイバッグ1枚を生産する際にかかる環境負荷はレジ袋1枚より大幅に大きい。レジ袋とマイバッグ各1枚あたりのCO2排出量を減量から製造、そして運送、処分の4つの段階に分けてCO2排出量を評価した研究データがある。製品やサービスの環境への影響を、製造から廃棄、再利用まで通して評価する考え方を追究する学会の日本LCA学会が2009年に発表したものだ。

 それによると、レジ袋は15.4g、マイバッグは781.7gのCO2を排出することがわかった。これはマイバッグを使う場合、50回以上使ってはじめてエコ生活の意味が出てくるということだ。レジ袋もマイバッグも、いずれも一般的には石油から作られるとはいえ、その資源の使用量はマイバッグを使い続けることで抑制できる。

 これに加えて、粟生木さんは「レジ袋はポイ捨てされやすく、海に流れてしまい、それを海洋生物が食べてしまう場合がある。また大量のゴミが砂浜に流れてきてしまい、結局は我々の生活に影響を与えることにもなる」とも指摘した。

「現状の生活を続けるなら地球一個分では足りない」

 杉浦さんは「懸念していること」として、「今のエコブームが根拠なしに騒ぐものであっては、根本的に環境問題解消に繋がらない。エコバッグを使っているからといって、服など買いすぎても大丈夫という思考に行きがちだ。地球にいいことをしているという思い込みになりすぎないようにするのが大事だ」と言う。

 そして劉さんは「ここで根本的なことは、なぜエコ生活が必要なのかということを知ってもらうことだ。そのためには、エコ生活をすることで我々に与えられる利点を多角度で情報提供をし、理解してもらうことが重要だ。また、政府機関や教育機関で環境に関する宣伝や教育を積極的に実施する必要がある」という。

グローバル・フットプリント・ネットワークなどの研究に基づく資料を同団体などが制作した「環境と向き合うまちづくり」より。原典はこちらhttps://www.footprintnetwork.org/content/uploads/2019/09/WWF-Ecological-Footprint-2019_2019911.pdf

 例えばリサイクルの問題がある。我々の日常生活で使っている、タンブラーやポンプ式シャンプーなどを思い浮かべてみれば、プラスチックやスチールなどの色々な物質で作られている。

 粟生木さんによれば、そもそもリサイクルというのは、同じ材質のものがある程度集まらない限り行いにくく、価値は出ない。色々なものが混合して作られている製品はいちいち分解して材質ごとに分別しないとリサイクルができないという。

 ここで生産者と消費者の役割が大事になってくるという。生産者には、リサイクルしやすいよう、一つの製品を同じ材質で作ってもらう。そして消費者にはリサイクルまで考えた製品を積極的に選んでもらうことだと粟生木さんは問題提起した。

 現状の生活を維持すると、資源は地球一個分では足りないというアメリカの環境学術団体、グローバル・フットプリント・ネットワークが2018年に発表した研究結果があると粟生木さんはいう。

 粟生木さんは、この研究結果から、もし世界中の人々の生活レベルが、ある国の生活レベルと同じだったら、地球何個分の自然資源が必要になるかという試算を紹介。「アメリカは5.0個分、中国は2.2個分そして日本が2.8個分という結果が算出された。国別ではなく全世界を見ても1.7個分という結果だ」という。つまり、発展途上国が生活レベルを上昇させなくても、今の世界は既に地球が自然資源を生み出すペースを大きく上回る量を消費し、自然環境や資源を食い潰しつつあるということになる。劉さんさんは、この研究結果に最も影響を及ぼしたのは現代の大量生産・大量消費・大量破棄の形だと話した。