肌で感じた組織力低下

オープンキャンパス学生スタッフ

人のつながり減ったコロナ禍で変化

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 コロナ禍の中で慎重な対策を重ね、ようやく対面で開催できたオープンキャンパスで感じたのは組織力低下だった。専修大学のオープンキャンパスを運営する組織、専修大学入学センター学生スタッフの法学部3年生星野僚介さん(21)は、昨年10月から1年間、組織の代表を務めた。現在も学生スタッフとして活動している。専修大学は2021年度、6〜8月に予定した6回のオープンキャンパスの多くが緊急事態宣言と重なるなどし、対面開催は6月のみ8月21,21日はオンライン開催、他の日程は中止となった。スタッフ全員が集まる回数が格段に減り、縦のつながりも横のつながりも薄れてしまった。コロナ以前とコロナ禍の組織力の違いは、オープンキャンパス当日に強く感じることとなった。

名前が分からない 教室が分からない

取材に答える星野僚介さん(2021年10月22日、専修大学神田キャンパス)丸澤海撮影

 「縦のつながりも横のつながりも弱くなった。みんなで交流するイベントも出来ないので、どんな組織かなかなか理解深まらなかった」

 オープンキャンパスを開催するかどうかは、専修大学の入学センターが決定している。オープンキャンパス当日は在学生がスタッフとなり、キャンパスの案内や、模擬授業の補佐、高校生からの相談に答える取り組みを行う。これらは学生主体で運営している。組織として、スタッフ同士の人のつながりが必要不可欠だ。これまで学生スタッフの組織力は仲の良さが重要だった。オープンキャンパスを成功させるという同じ目的を持って行動し、団結力を高めていた。

 コロナ禍で先輩たちはなかなか後輩を知る機会がなく、後輩たちも先輩のことをあまり知らない。オンラインで交流会を計画したが、後輩との交流が著しく少なかったにも関わらず、フリートークにしてしまったため、盛り上がりにくかった。ミニゲームやテーマを出した上で会話をするなどすればよかったと星野さんは話した。

 現場ではさらなる問題が持ち上がった。

 「集合場所はこの教室だとみんなに伝えても、その場所がどこか分からないという声が多かった」
 コロナ禍に入学し、学生スタッフに加わった1、2年生のほとんどは、大学に行ったことがほぼない。スタッフが大学に通っていないと、いざオープンキャンパス開催となったときにキャンパスの案内が出来ない。専修大学は神田キャンパスと生田キャンパスの2つのキャンパスがあり、詳しく説明できるのは自分の通っているキャンパスだけということはコロナ前でもあったが、オンライン授業に移行して大学に通わなかった結果、自分のキャンパスさえも知らないという問題が発生した。オープンキャンパスで説明できるよう、それまでに研修をするが、来場者に教室の行き方を尋ねられても、すぐに答えられないということもあった。

スタッフ不参加3割増

 今回のオープンキャンパスは、キャンパス内の「密」を避ける人数規制のため、完全予約制になった。来場者の数を把握することで、どの時間帯にどれくらい来場者の方が来るかが分かり、この時間は受付を増やした方がいい、この教室の前が混雑するかもしれないなど、来場者の動きを予測しやすくなる。

 しかし今回のオープンキャンパスでは、一部教室の前で渋滞ができ、その近くのエスカレーターで、来場者が降りられないということも起きてしまったと、星野さんは説明する。

 今回の対面で開催したオープンキャンパスについて「コロナ前と比べて来場者の方と接する機会が少なく、手応えがあまりなかったが、スタッフや来場者の方々のコロナ感染がなくて良かった。完全予約制というシステムは人の動きを予測しやすいという大きなメリットがある。コロナが終息しても、完全予約制になるのではないか」と語った。

 学生スタッフでオープンキャンパスを統括している商学部3年の吉田龍人さん(21)によると、学生スタッフの参加率が下がり「肌感覚だが、今までより3割くらいは、不参加が多かった」という。オンライン授業のため、学期中でも実家に帰省している、コロナ感染を恐れる——というコロナ禍に直接関係する理由の一方、ここにも「つながり」が薄れている影響が見えてきた。

 「1、2年生は友達がいない、つながりがないから、参加することを楽しみと考える人が少なく、参加するかを自分の判断に委ねると、行かなくてもいいかと感じる人もいただろう」

取材に答える吉田龍人さん(2021年12月6日、zoomインタビュー画面)丸澤海撮影

 彼らは同じ学生スタッフでありながら、交流する機会がほとんどなかった。スタッフ同士が仲良く、楽しんで参加できるという学生スタッフの良さを、1、2年生にはまだ感じとることが出来ていないと、吉田さんはみている。

 「いままでオープンキャンパスは、スタッフ全員がほとんど参加だったが、今回は参加率が減り、組織としてのまとまりが欠けたように感じた。つながりが増えて欲しい」

 学生スタッフの中でも、オープンキャンパスをまとめる立場にあるのが、4人の統括と呼ばれるスタッフたちだ。なにか問題が起きていないか、当日はキャンパス内を巡回しているが、すべての場所を回れるわけではない。現場でトラブルや疑問が持ち上がれば、その場にいるスタッフ同士で判断をする。その時にスタッフ間の仲の良さが必要だという。

 「来場者の案内をするからここは任せたというように、信頼しているからこその指示も出来る。今回は各シフトに3.4年生を配置して、1.2年生を引っ張ってもらった」

対面開催のオープンキャンパス当日、キャンパスを案内するスタッフ(2021年6月13日、専修大学生田キャンパス)学生スタッフ提供

次世代につなぐ

 オープンキャンパスの資料を触っても良いのか、高校生の相談を受けるときにフェイスシールドは必要か、当日のコロナ対策の確認がかなり増えた。だが、コロナ感染防止とは別の確認事項があった。スタッフの名前の確認だ。「顔と名前が一致しなかった。名前間違いを防ぐため、いちいち名簿を確認してから、名前を呼ぶことにしていたので、その分すぐには対応できなかったかもしれない」と吉田さんは振り返る。

 また予約制になって、予約時にウェブ上で発行される入構証が必要で、その確認も必要となった。入構証を知らないまま来場した人もいた。職員が対応し、参加してもらったが、こういったことのない、誰でも簡単に参加できるオープンキャンパスにしたいと述べた。

 吉田さんは完全予約制をなくして、より多くの人が来やすい環境の方がいいと言う。

 「予約制でない方が忙しく、たくさんの来場者の方と話す、大勢の人の流れを動かすという経験がやりがいにつながる。スタッフとして明確に目標をもって挑み、やりがいを感じて欲しい」

 やりがいが今ひとつに終わることなく、スタッフとしてためになる経験が出来るオープンキャンパスを運営したいと考えている。次のオープンキャンパスはコロナ対策を徹底しながら人数制限なしでできたらいい。スタッフも参加率が上がってくれれば嬉しいと話した。

 星野さんは1年間代表を務めて「コロナ禍という前例のない時代で、組織を運営する難しさを学べた。次の代表を務める世代は完全オンラインの世代なので、オンラインを生かしていって欲しい。またスタッフも楽しんで活躍できる組織作りを頑張って欲しい」。吉田さんは「無事に終了することが出来て良かった。オープンキャンパスは中止が続いたが、小さい規模でも高校生のためになるイベントができてほっとした。統括同士は2年生なりに交流している。そのリーダー同士の雰囲気が派生していき、良い雰囲気で取り組んで欲しい」と語った。

 次回のオープンキャンパスは2022年3月20日の開催が予定されている。

【注】1月25日午前9時29分に公開した最初の版で、2枚目の吉田龍人さんの写真のキャプションが誤って「取材に答える星野僚介さん」となっておりました(ウェブアップロード作業をした澤康臣のミスです)。おわび申し上げるとともに訂正します。(1月31日午後7時35分)