故郷で未経験 地震の備え不安

一人暮らし学生の災害情報どうする

川崎市「防災アプリ」「マイ・タイムライン」推奨

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 故郷では体験したことのない震度3に一人暮らしの専修大生は驚き、災害時の行動を考えた。2019年の台風19号では川崎市多摩区でも浸水被害が出た一方、安全な場所の住民まで避難し混乱が起きた。災害への備えを市民一人一人が意識することが問われている。多摩区役所は災害時に自分の命を守るための計画を日頃から準備する必要性について伝えている。災害情報について、一人暮らしの学生への声がけに課題が残るため、川崎市が運用するメールやアプリで正確な情報を提供するなど、模索している。

川崎市が防災情報を提供する「かわさき防災アプリ」

震度3の揺れに危機感

 2021年10月7日に発生した地震は震源地の千葉県北西部で震度5強を観測した。川崎市多摩区・麻生区でも震度3の揺れが発生し、麻生区で一人暮らしをする専修大学文学部英語英米文学科3年生の檜垣あかねさん(21)は「地震の揺れが大きくて驚いたことを覚えています。友達にLINEで『めっちゃ揺れた、こんだけでかいの初体験』と送ったほどでした」と語る。檜垣さんの出身地富山県ではこのような地震は少なく、対策はしていなかったという。上京してからも災害を意識することはあまりなく、10月7日の地震発生時は「とりあえず逃げられるように急いで携帯の充電器と財布の準備をして、ツイッターで情報収集をしていました」と話した。しかし、逃げる準備をしていたものの避難場所の把握はしておらず、災害対策をしていなかったことに危機感を覚えたという。

 川崎市多摩区で危機管理を担当する堀川秀幸地域防災担当係長は「地震は予想できないからこそ、日頃からの準備、備えが必要」と訴える。具体的な目安として「他の地域から送られる救援物資が届くまでには最低3日かかると想定されています。備蓄については水・食料を最低でも3日分、できれば7日分は用意していたただければと思います。また、食同様に重要なトイレについても、各ご家庭で携帯トイレを用意していただければと思います」と言う。

 一方、多摩川に面した多摩区では水害への備えも重要だ。このような災害時にどのような行動を取れば良いのか。

安全区域なのに避難所へ、混乱も

 堀川さんによると、2019年に起きた台風19号では多摩川等河川の水位が大雨によって上昇し、氾濫に備えて川崎市多摩区だけで18カ所の避難所が開設され、合計約8000人が避難した。そのうちの一つの中野島小学校には約1550人が避難し、廊下にまで人が溢れ出てしまう状況だった。全ての避難場所に職員が2人体制で配属されたものの、対応しきれず地域の人々に協力してもらいながら現場を回したという。

災害発生までの数日間にやるべき備えを記す「マイ・タイムライン」の作成例=川崎市ウェブサイトから

 その中には安全な地区で避難の必要はない住民も多数いたという。テレビなどで多摩川が氾濫するおそれが伝えられ、パニックになった人々も多くいた可能性がある。実際に多摩川が氾濫しても被害に遭わない地域が存在し、ハザードマップにはその区域が記載されている。だが、そのことを認知していた人々が少なかったことから混乱を招いてしまった。

 これを踏まえて、国土交通省が提唱している「マイ・タイムライン」を活用してほしいと堀川さんは言う。マイ・タイムラインとは、一人ひとりが事前に防災行動計画を考え、台風接近など災害発生が心配される状況になってから河川氾濫のような実際の災害発生までの数日間に、「どう避難するか」や「家族の安否確認」などをどのタイミングでやるべきか、書き留めておくというものだ。そこでは実際に自分がどこへ避難したら良いか考える機会になる。コロナ渦でもあるため「分散避難」が推奨され、親戚の家、避難所、そして安全であれば自宅にとどまるなど自分に合わせた避難方法をとることで避難所でのクラスター発生といった複合災害を避けることに繋がると、堀川さんは指摘する。

防災出前講座を受ける小学生(2020年8月20日、東生田小学校体育館)川崎市多摩区職員撮影

日頃から自身でも対策を

 「自助」も災害対策に欠かせない。事前に防災グッズの準備や、避難手段の確認を行うことで、緊急時でもスムーズな行動に繋がる。これを支援するため、多摩区はホームページに災害情報を記載し、小学校に防災出前講座を開いている。しかし課題もあり、小学校以外にも市民活動団体で呼びかけを行なっているものの、一人暮らしの学生に中々声が届かないという。多摩区では登録したら防災情報をリアルタイムで送信する「メールニュース かわさき」の登録や「かわさき防災アプリ」の登録を促している。アプリ内ではハザードマップはもちろん、電車やバスなどの運行状況を確認できる。外出先でテレビを見ることが出来ない状態でも手軽に情報収集が可能だ。

 アプリのダウンロード数は2021年11月現在8154にとどまっており、多摩区は広くPRしていきたいという。