学食3店舗、売り上げ6割減

生田 CABIN、VIEW、NAPTIME

コロナ禍、パン直売と助成金で奮闘

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 新型コロナウイルスの影響で専修大学も他大学同様オンライン授業が続き、多くの学生が大学に登校しなくなっている中、大学学食の経営は厳しい状況に置かれている。専修大学生田校舎のCABIN(9号館)、VIEW(食堂館)、NAPTIME(同)を経営する富士ベーカリーによると、この3店舗の売り上げは昨年より対面授業が増えた今年4月以後も通常の6割減になっている。仕入れを絞ったりメニューの種類を減らしたりする一方、新たに始めたパン工場直売と、コロナ対応の公的助成金に支えられ、窮地を乗り越えようと奮闘している。学食スタッフは、以前のように学生との交流ができる日を心待ちにする。

取材に応じる富士ベーカリー取締役大和久のり子さん(2021年5月25日午後2時、専修大学生田校舎 食堂VIEW)益岡瑞姫撮影

「学食が大変だ」

 富士ベーカリー取締役大和久のり子さんによると、昨年の4月から6月までの間、緊急事態宣言のためこれらの学食は完全休業し、売上はゼロとなった。一部対面授業が始まるとのことで昨年7月から営業を再開したが、VIEWの1日の利用者は通常400~500人に対し、100人に満たない数だった。そのほとんどが大学職員で「学食が大変だろうから」と声を掛けながら利用していたという。今年4月から全学年で対面授業も増え、一時売り上げが通常の6割ほどに戻ったが、4月25日に再び緊急事態宣言が発令。ゴールデンウイーク後には売り上げは4割にまで落ち込んだ。

 そもそも学食の売り上げに対し、材料費はその半分、人件費には4割に相当する額がかかり、その他にも機械のリースや電気代、ガス代などを捻出する必要がある。そうした経費をすべて引いた残りが利益になる。そうなると現在の売り上げでは赤字は避けられない。しかし、新型コロナ特例の対応で雇用調整助成金が支給され、富士ベーカリーはギリギリのラインで黒字に踏みとどまっているという。大和久さんは「補助金が命綱です」と述べる。オンライン授業が続き、学生の登校数が元に戻らないため、同社は雇用調整助成金の特例措置のさらなる延長を求めている。コロナ終息の出口が見えない中、厳しい状況が続く。

仕入れ業者にも影響、メニュー絞る

専修大学生田キャンパス 食堂VIEW 停止中のメニュー
(5月25日午後3時) 神戸登加撮影

 昨年4月からの休業期間、学食は在庫食品の扱いをどうしていたのか。大和久さんによると昨年3月には営業休止となることがわかっていたため仕入れはせず、余った材料食品の扱いに困ることはなかったという。元々食品ロスを減らす取り組みとして、肉や野菜などの生鮮食品は翌日分のみ仕入れており、事前の大量仕入れは行っていない。しかし、ペットボトルのお茶などの日持ちするものは仕入れてしまっていたため期限切れが近づき、最終的には安く売ったり、パート従業員に配ったりしたという。

一部の仕入れ業者からは一時的に仕入れをストップした。それらの仕入れ業者の販売先は専修大学だけではないとはいえ、他の飲食店や学食もコロナ禍の影響で売り上げが下がり、仕入れ量も減っているため、大和久さんは厳しい表情で「仕入れ業者の方もきついと思う」と語った。

 コロナの影響でメニュー面にも変化があった。ネギトロなど生ものを扱うメニューは冷凍で食材を仕入れ解凍する必要があり、解凍された食材は次の日まで保存することができないため、その日に売り切る必要がある。客数が減った今の状況では提供するのが難しく、販売を中止している。フードロス防止のため、一品を大量に作らず10人前などに抑えたり、注文をうけてから調理する方法をとったりしている。台湾まぜそばやステーキ丼など現在は販売していないメニューもあるが、売り上げがコロナ禍以前の状態に完全復活したら提供を再開するという。大和久さんは「他の学食にはないようなメニューがあると思います」と笑顔を見せた。

富士ベーカリー工場前の直売(2021年7月6日正午、川崎市多摩区枡形)金ハンギョル撮影

学食スタッフと学生の交流

 コロナ禍で学食が苦しい状況に立たされた富士ベーカリーは、川崎市多摩区枡形の工場前でパンの直売を始めた。この利益が上がり、経営を続けることができたという。学食の運営には多くの人員が必要なため、売り上げが人件費に回ってしまう。しかしパンの直営は社員1人とパート2人で効率的に作業が行われ、人件費を抑えられ利益が大きいということだった。このパン直売が若干の黒字を保っている理由の一つだという。学生の授業が全面的に対面授業に戻るまでは直営販売を続けていきたいと大和久さんは語っている。

 専修大学生田キャンパスの学食の一つであるVIEWはサークルのたまり場であり、学生との交流の場でもあったという。食堂で顔を合わせ会話していくうちに複数のサークルの学生と顔見知りになったと大和久さんはうれしそうに話す。就職活動で内定が決まった話など個人的な話をするほど仲が深まり、大和久さんにとって食堂は食事を提供するだけの場ではない。学生たち、そして自身のコミュニケーションの場でもある。学生との関わりが減った現在、「サークルの活動が全然なくて学生と話す機会がなくてすごくつまらない」とさみしさを語っている。

「愛情を感じる」学生からのエール

 学食を愛用しているという学生たちからは、「愛情を感じる」との声とともに、現状を乗り切ってほしいという応援メッセージが寄せられた。

 文学部ジャーナリズム学科3年山本南さんは「私にとって学食は、滅多に食べることができないご馳走です。最近は、オンライン講義が多く、なかなか学食を食べられる機会がありません。しかし、先日久しぶりに友達と学食を食べに行くことができました。その際に、普段食べているお母さんの手料理とはまた違った味と愛情を改めて感じることが出来ました」と話す。学食のピンチを救うため、何かできることはないか。山本さんは「キャンペーンを学生含む学校全体で考え、実行していく必要があると思います」と述べ、何らかの動きを大学内の人々が作り出すべきだとみる。「一日でも早く経営が回復致しますように心の底から願っております。また美味しい学食が食べられる時が来ることを楽しみにしています」とエールを送る。

同学科3年の上田菜々美さんは「私にとって学食は、使えるお金が限られている中でお財布に優しい昼食です。いつも安くて美味しい学食を提供してくれてありがとうございます!コロナ禍になってキャンパスに来る学生が少なくなり大変な状況ではあると思いますが、頑張ってください!」とメッセージを送った。