女性4分の1超に雇用打撃

コロナ禍調査、男性と格差

識者「女性貧困問題が可視化」

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 新型コロナウィルス感染症が経済に影響を与える中で、解雇や離職、労働時間大幅減など、雇用に影響を受けた民間労働者の割合は男性より女性、正規雇用より非正規雇用の人が高いというデータが調査で示された。専門家は「非正規雇用率が高い女性たちの貧困問題が可視化される契機」と指摘する。そして女性が非正規の職を選ぶことになる背景として、今も女性に家事負担が集中する現実を挙げ「改善には社会全体が家族ケアの重要性を知るべきだ」とも訴えている。

コロナ禍の「女性不況」

 この調査は、コロナ禍が深刻化して半年以上が過ぎた2020年11月にNHKと労働政策研究・研修機構が民間企業雇用者約68000人に実施した。解雇や雇い止め、自発的な離職、労働時間の長期大幅減、休業7日以上のどれか一つがあった人の女性労働者は26.3%、男性労働者は18.7%だった。雇用形態で分けると、正規労働者でこうした打撃を受けた人は男女計で16.7%、男女別では女性18.4%に対し男性は15.9%。非正規は男女計で33.0%、男女別では女性33.1%、男性32.8%だった。

 いずれの分類でも女性が雇用上の影響をより多く受けている形だ。政府の要請による商業施設、飲食店の一時休業や、行動自粛による売り上げ減のための閉店が相次ぐ中で、女性の働き手にしわ寄せが行っている可能性がある。

 一方で、非正規労働者は、その3分の2が女性であることが、総務省統計局の2020年7月労働力調査で示されている。島根大学教授(家族社会学)の片岡佳美さんは、依然として女性に家事負担が集中することが、不安定な非正規労働を選ばざるを得ない原因になっていることを指摘し、「非正規雇用率が高い女性たちの貧困問題が可視化される契機ともなり、これを改善していくには社会全体が家族ケアの重要性を知るべきだ」という。

 2019年、内閣府の男女共同参画の調査によると、男女の非正規雇用率の表で表れているように男女の非正規雇用率は年々上昇していることがわかる。だが、どの年度を比較しても男性より女性の方の非正規雇用率は2倍以上にのぼる。

 同じく内閣府の調査によると、2020年の日本国内の就業者率は、15~64歳の女性は70.6%、男性は83.8%となっている。その差は2012年から女性の就業率は上昇しつつあるが、男女の差はまだ大きい。

リーマンショックとの相違点

 日本女子大学人間社会学部教授の周 燕飛(しゅう・えんび)さんが昨年6月発表した研究によると、「新型コロナウィルスの影響で多くの女性の貧困問題が深刻化していることが明らかになり、海外ではコロナ不況を『She』と『Recession(不況)』の造語の「シーセッション(女性不況)」と呼んでいる経済学者もいる」という。

 2008年のリーマンショックでは、輸出産業など外需型産業の不況が目立った一方で、今回のコロナの影響では「外需型産業不況に加え、飲食や宿泊などの対面サービス型内需産業不況が目立っている」と指摘した。この研究は労働政策研究・研修機構の主催した「新型コロナウィルスによる女性雇用・生活への影響と支援の在り方」フォーラムで発表された。

 「女性不況」は上記と同様の調査機関の結果にも現れているという。周さんが同調査の数値を分析すると、緊急事態宣言の影響を受けた2020年5月、男性、女性全体、子育て女性のいずれも月収が通常の月より大きく下落したが、「男性の下落の幅が一番小さく、子育て女性は下落幅が大きく、通常月より12%減少している」と指摘した。

社会制度は性役割によって作られたもの

島根大学教授(家族社会学)の片岡佳美さん(ビデオ会議システム画像、2021年11月16日午後5時)金ハンギョル撮影

 島根大の片岡さんは、「男女間の非正規雇用率の差が激しいのは、社会制度に問題がある」と指摘した。1960年代ごろから日本社会に「夫は仕事、妻は家事育児」といった性別の役割分担が浸透したという。そのような構造で社会が回る状況が現在も続いている。

 最近の女性の社会進出の一方で男性の家事分担は進まず、結局女性が仕事も家事も両方を背負わなければならない状況になってしまっているという。

 そして片岡さんは「130万円の壁」を指摘している。これは健康保険などを含む社会保険に扶養家族扱いの無負担で入れるのは、年収130万円までという制度のことだ。片岡さんは「社会保険は、夫が稼ぎ手で妻が専業主婦のパターンを想定して作られたものだが、妻が130万円以上の収入を得ると、扶養家族扱いから外れてしまい、独自に保険に加入し、保険料を自分で払わなければならない」という。

 あるいは「150万円の壁」もある。こちらは税金の制度で、年収150万円を超えると、配偶者特別控除の適用外となって税金が多く課されてしまう。このような構造によって「夫と同様に働こうという意欲がそがれる」「稼ぎを月当たり10万円程度に抑えるように調節するのでは、女性がフルタイムで働くのは難しい。融通の効くパートタイムのような非正規雇用職につきがちだ」と片岡さんは言う。

 一方で、「もちろん税金を多く払ってももっと稼ぎがあるのであれば話が違ってくる。だが、一旦家庭に入って育児や家事に専念していた人はキャリア断絶により、より多くの税金を払ってもいいと思えるほどの収入が得られない」とも指摘。一度家庭に入った人の場合、フルタイムで働く意欲がそがれるだけではなく、仮に本人が意欲を持って税金や保険料と関係なく本格的な職に就き直そうとしても、それ自体も難しいという、いわば二重の困難に直面することを示した。

男性の家事・育児時間増加

 一方、同機構の連続調査(12月調査)によると、家事時間は通常月より緊急事態宣言期間中に男女ともに6~10%増加し、そして男性の家事時間が11%増加したことが確認できる。しかし周さんは「男性の家事時間は元々短く、この時期の増加率は高くてもなお女性の家事時間の半分で、家事負担が女性に偏っている状況は続いている」と指摘する。

働く女性たちの悲鳴

 こうした状況が変わらない原因について、片岡さんは、「政府が家事・育児などの家族ケアを『家族任せ』にしている」ことがあるのではないかとみる。「コロナショックが続いている現在、できるだけ社会保障のコストを抑えたいのが政府の立場」だと指摘した。

 一方で、国は女性に経済的な活躍を呼びかけている。片岡さんはしかし、女性が活躍するとなると「現状の社会制度と流れでは女性は家事も仕事も両立しなければならず、身が持たないと悲鳴を上げている」と言う。

 周さんは研究発表の中で「コロナ禍での女性不況が長引くことによって、女性のキャリアに深刻な影響を及ぶことが懸念」されると指摘している。そして「勤労者の生活破綻を防ぐ支援策の拡充が必要で、特にシングルマザーにおいては、少しの雇用変化が起きると打撃を受けやすい立場」だと警告する。

 これに加えて片岡さんは厳しい環境の女性たち同士がつながる環境がコロナで失われたという問題も提起する。「今回のコロナ禍で、交流・コミュニケーションを取る機会がなくなったことは、余計女性たち、特に子育て女性やシングルマザーを大変な状況に追い込んだ」と心配している。