窮地か好機か コロナ禍の日本留学

試験中止し留学生激減

競争も減「乱世はチャンス」の声も

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 コロナ禍以来、来日する留学生の数が激減している。文部科学省「外国人留学生在籍状況調査」のデータによると、2021年5月1日の時点で外国人留学生の数は242,444人で、近年ピークとなった2019年の312,214人に比べ、69,770人(22.3%)減少した。2020年、21年と2年連続減っており、減少傾向はこれからもまだ続きそうだが、すでに留学生として日本に滞在し、進学塾などに在籍して大学や専門学校への進学をめざす立場の外国人たちの目には、コロナ禍は窮地にも、好機に映っているようだ。日本留学のための試験が中止になるなどの影響で、進学の機会が得にくくなる一方、受験者が激減したことで競争はゆるくなっていると感じる留学生もいるためだ。

日本留学試験受験者数の推移(出典:日本学生支援機構)

日本留学試験、世界的に受験者減、中止も

 日本で大学や専門学校に進学する鍵で、外国人留学生ためのセンター試験と言われる日本留学試験(EJU)は年ごとに2回行われるが、新型コロナウイルス感染拡大により、2020年度第1回(6月実施)は中止となった。また、日本学生支援機構(JASSO)のデータによると、2014年以後は伸び続けていた同試験の受験者数が2020年以降急減したことが明らかになった。

李簡舟さん(2022年9月5日、東京都内)李さん提供

 「新入社員なのに、その『中止』は転職しなくてはならなくなる前兆かと不安になった」。
 2020年6月の日本留学試験の中止について、日本にある外国人留学生向けの塾で働く李簡舟さん(27)は当時受けたショックをそう語った。せっかく塾で働き始めたのに、コロナ禍の先行きは見えず、このまま日本留学試験の中止が続いて留学自体が行われなくなってしまえば、塾も立ちゆかなくなってしまうと懸念したのだ。
 この中止は生徒たちにも動揺を与えたが、李さんの話によると、教え子たちの反応は人によって相当違っていたという。受験準備を整えていた生徒は残念そうな表情を見せた一方、そうではない生徒たちは「ラッキー」と言わんばかりの顔だったと振り返る。
 2020年度第1回(6月)試験の中止によって受験できなかった学生は同年度第2回試験(11月)に参加した。このため、第2回の受験者数が一気に伸び、新型コロナウイルス感染拡大前に近い水準まで回復したが、受験者数の急回復はトラブルも生んだ。李さんは「学生たちへの受験通知書が一つの箱に入っているのをクラスごとに分けなければならないのだが、人手不足でオフィスの中は混乱が起きた」と当時の塾の様子を述べた。

「当時はチャンスだったのかも」

 「乱れる世界こそチャンスがたくさんあるよ」。章達シンさん(25)は、2020年に日本留学試験が中止となった混乱こそ、むしろ留学の好機だったのではないかという考え方を述べる。「日本の大学の秋学期を狙うとしたら、あの中止はかつてないチャンスだったのかもしれないよ」。
 どうしてそう考えるのか、そのメカニズムは次のようなものだ。
 留学生が日本の大学に進学しようとする場合、日本の大学は出願前2年分(計4回)の日本留学試験の点数の4回のうち一番高い1回を使える。留学生の場合、秋入学の制度を使う受験生も多いが、2020年秋入学を狙う場合には2020年6月の試験が中止となったため、使えるのは2018年度第二回目と2019年度の計3回分だけとなり、該当する受験生は少なくなっている。2020年6月試験の中止によって日本留学試験の新規受験者はいないこともあわせて考えると、2020年秋入学を目指す受験生自体は確実に減少した。そもそもコロナによって留学を見合わせる人も多く、2020年秋入学に向けた入試競争は相当緩和されている。
 「『日本留学試験が再開される前に早く手を出した方がいい』と思いながら秋学期を志願した」。章さんは笑いながら当時の考え方を語った。