フッ素化合物汚染避けて水確保、市負担年3840万円増の恐れ

座間市、一部取水停止し県から受水

米軍基地疑われるが調査できず

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 座間市で2020年ごろから、米軍基地周辺にある河川や水源、井戸から有機フッ素化合物(PFAS)が国の暫定目標値を超えて検出されている。座間市の水道水を取り入れる水源のうち、中東部、栗原地区に位置する第三水源地では、座間市上下水道局が2021年10月に実施した水質検査において、国の目標値(1リットルあたり50ナノグラム)を超える数値が確認された。第三水源に加えて、第三水源を主な水源とする相模が丘配水場の出口でも暫定目標値を超えた。市によると、これを受けて11月より第三水源は一時的に取水を停止する事態に発展しており、2022年7月現在でも超過がみられるため、取水は止まったままだ。

座間市の第三水源ポンプ所(2022年12月24日午前9時40分、神奈川県座間市栗原)古閑大雄撮影

広範囲で高い値

 第三水源の取水を止めているため、座間市はその分の水を神奈川県企業庁からの水(県水)を増やすことで補う。環境問題に取り組む座間市議会議員の守谷浩一さんによると、神奈川県からの県水受水費用は2021年と2022年の当初予算比較で「約2600万円に上っている」と独自の試算に基づき話す。今年、9月13日に行われた市の都市環境分科会では、昨年11月から今年3月の水源停止の影響として、5ヶ月間の受水量と取水量に単価を掛け合わせた価格は1600万円に上っていることがわかった。今後、同割合の増加率で進むと1年間の合計は3840万円にも上る可能性も危惧され、「市の負担軽減のため、早急な対応」が必要だとした。
 同時期に環境省が実施した全国調査、神奈川県が行った調査では米海軍横須賀基地や大和市、綾瀬市内の本蓼川など神奈川県の広範囲で、沖縄と同じく米軍由来の消火剤にも含まれるPFOS(PFASの一種)の値が高く出ていることから、米軍基地が問題視された。
 一方、自然環境中では分解しにくいため、過去に使用され環境中に排出されたものが土壌中に残存し、河川水や地下水に溶け出しているものとも考えられる。同県の横須賀市では、米海軍横須賀基地内の排水施設で、アメリカ軍の水質検査によって、目標値を超過していることがわかった。しかし、座間市では、PFASが基地から出たと立証するために必要とされる基地内への立ち入り調査が行なわれていないため、現在も、第三水源をはじめとする座間市内の水汚染の原因が何か、立証できていない。

PFOS・PFOAとは
 問題になっている有機フッ素化合物(PFAS)は、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸) PFOA(ペルフルオロオクタン酸)の総称だ。経済産業省や神奈川県によると、PFOSは2009年の「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」の第4回締約国会議において、制限への追加掲載が決定された。生物中に蓄積するという有害性がある。国内では2010年4月から「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」の第一種特定化学物質に指定され、製造・輸入が原則禁止となったとされている。
 PFOAは、2019年のPOPs条約の第9回締約国会議において、廃絶への追加が決定された。国内では2021年10月から化審法の第一種特定化学物質に指定され、製造・輸入が原則禁止されることになっている。人体において、皮膚に付着すると発赤、痛み、眼に入るとかすみ眼、吸入すると咳や咽頭痛、経口摂取すると腹痛や吐き気、嘔吐を生じるといった症状が報告されている。しかし、水質汚濁防止法や県生活環境の保全等に関する条例において、排水基準は設定されていない。どちらも安定した構造ゆえ、環境中で分解されにくいという性質を持つ。また、過去に製造された中性強化液消火器や機械泡消火器については、PFOS又はPFOAを含有している場合があるという
市の水道を管理する座間市上下水道局(2022年12月24日午前9時24分、神奈川県座間市緑ケ丘1丁目)古閑大雄撮影

水源停止

 座間市上下水道局水道施設課管理係の長谷川博之さんによると、市内の第三水源は昨年10月の水質検査(2021年10月)で、PFASが合計で1リットルあたり約100ナノグラム検出され、国の暫定目標値の1リットルあたり50ナノグラムを超過していることがわかり、検査の結果、過去に製造された消火剤や、米軍由来の消火剤にも含まれるPFOSの値が高く検出された。市内の米軍施設が原因である可能性も考えられているが、立ち入りでの調査ができていないため、未だ解明できていない。
 同じく有機フッ素化合物として有害性の高いPFOAも高い値で検出されている。神奈川県のホームページ(環境農政局 環境部待機水質課)によると、自然環境中では分解しにくいため、過去に製造されたものが使用され環境中に排出されたものが土壌中に残存し、「河川水や地下水に溶け出しているものと考えられる」と説明されている。PFOAは主にテフロン加工のフライパンや電子基板、自動車部品、食品包装紙、など広く使われる素材である。
 座間市は独自の水道事業や水質対策に取り組み、地下水保全計画、地下水を保全する条例がある。しかし、基地と隣接する座間市を含めたそのほかの地域など、有機フッ素化合物の問題は県や市を含め、国単位で環境上の問題に対応を迫られている状況である。アメリカでは今年6月下旬に同国環境保護庁(EPA)がPFOSについては1リットルあたり0.02ナノグラム、PFOAについては同0.004ナノグラムとし、これまでの目標値1リットルあたり70ナノグラムから数千倍厳しい基準とし、ガイドラインを変更している。

立ち入り検査できず、米軍基地が原因と断定困難

 座間市水道施設課管理係の長谷川さんは「インターネット上のホームページを閲覧している人がどれほどいるか」との質問に、去年12月に開設した「有機フッ素化合物への市上下水道局の対応」というサイトへの2022年9月まで総アクセス数は1735回で1ヶ月毎に平均して192回であることを明らかにした。
 一方、市議の守屋さんは、水源の停止が続く座間市、「問題を認知している人はどれほどいるか」と不安を抱いた。
 神奈川県の有機フッ素化合物に関するQ&Aや座間市の有機フッ素化合物への市上下水道局の対応という発表、神奈川新聞の「座間の水源で有害物質 市は取水停止、米軍基地と関連か」という報道後から市ホームページの閲覧数の増加が見られたものの、同市の世帯数が約61,386世帯。市民全体に実態が把握されていない可能性もありうる。
 PFOSは米軍で使っている消火剤に含まれ、同物質が基準値を超えて検出された第三水源の近くには、米軍キャンプ座間がある。しかし、米軍キャンプ座間が有害物質の原因かどうか、立証に欠かせない立ち入り検査はできていない。「自分達も触れる水、自らを危険に晒す行為をするだろうか」。この問いに対して守谷さんは、「水源の北側には米軍相模総合補給廠があり、米軍基地を疑うにも相模原の施設が原因である可能性も考えられる」と指摘した。過去に製造されている消火剤、民間施設や消防施設などもあるだけに米軍基地が原因と断定はできないため、一番近くの施設が問題と直ちに考えるよりも、まずは多角的な観点から検証する必要があると付け加えた。

米軍施設多く沖縄と類似、米は厳格な新基準

キャンプ座間と第三水源地の位置関係 google map を利用し古閑大雄作成
米軍相模総合補給廠と第三水源地の位置関係 google mapを利用し古閑大雄作成

 神奈川県は沖縄県に次ぎ、全国で2番目に米軍由来の施設数が多く、その他にも自衛隊の施設も多く点在している。原因となりうる施設が近隣に多いことから、化学物質の流出源を絞ることができず、原因が不確定な要素も多いことも沖縄県と似ている。
 一方、アメリカでは今年6月下旬に同国環境保護庁(EPA)がPFOSについては1リットルあたり0.02ナノグラム、PFOAについては同0.004ナノグラムとし、これまでの目標値1リットルあたり70ナノグラムから、基準が数千倍厳しいガイドラインとした。事実上、検出されること自体、いけないという姿勢とさえいえる。米環境保護庁のガイドラインが基地内でも施行されるのであれば、米軍施設内では1リットルあたり0.004ナノグラム基準、隣り合わせの座間市では日本の目標値の同50ナノグラムと、大きな差が生まれてしまうことになる。そうなれば、日本側も本格的な基準値の見直しが求められる。