男女の賃金比率100:74

背景に「性別役割分担」と連合・井上久美枝さん

「折れなければ、転機は来る」学生に声援

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 「折れなければ転機は来る」。根深いジェンダー格差の解消に取り組む日本労働組合総連合会(連合)の総合政策推進局長である井上久美枝さんは訴える。井上さんは、現在も入社後の研修回数に差があることや女性が受け取る賃金が男性の約7割と、あらゆる場面で女性が不利な状況に立たされていると話す。その背景には家事に代表される無償労働を女性が背負う、根強い「性別的役割分担」が女性の社会進出を妨げている問題があるとして、連合は男性の協力や女性の社会参画を呼びかけているという。

10年以上変わらない賃金格差

 現在の平均勤続年数は男性が13年に対し女性は9年。男性の受け取る月額平均賃金を100とすると女性は74.4(厚労省2021年調査)。連合の井上局長は、この賃金格差は10年近く数値が変わっていないと話す。さらに、入社後の研修にも男女差が現れる。相対的に女性の方が研修の機会が少なく、スキルを磨けないためキャリアアップにつながらないと井上さんは指摘する。そのため入社1年目から差が出てきてしまうというのだ。長らく男性優位な職場環境が続いて、なかなか女性が入り込みづらい上に管理職ともなると、余計に周囲の理解を得るのが大変になることも問題だという。

日本労働組合総連合会総合政策推進局長の井上久美枝さん(ビデオ会議システム画像、2022年7月27日午前11時42分)春日絢音撮影

 井上さんは、過去、性別を理由に管理職に居づらい思いをした経験を語った。連合に勤める前は、文部科学省が所轄する独立行政法人日本スポーツ振興センターに勤めていた井上さん。その労働組合で役員を務めたことを機に、管理職として地位を高めていったという。「職場自体も男性が多いというか、体育会系の職場だったので、『やっぱり女は…』みたいなのは昔からあったんですけれど、それでも長く組合の役員を続けていたので、ポジションにつくときには、誰よりも経験が長かったというのもあって、認めてもらえていました。でも若い時には『女のくせに…』ってのもありましたし」と当時を振り返る。

 職場を連合に移してから、多くの組織を束ねる「花形」ともいわれる組織部長を担ったが、「他の組織とかから、『え、女性が組織部長!?』ってこともやっぱりありましたね」と話す。様々な役職を長く継続することで自分の力を周囲に認めてもらえたが、その道のりは厳しかったという。井上さんが恵泉女学園大学で自身の昔の話を学生にすると、信じられないという声が多く上がった。「男女差別が強く残る昭和の時代からしたら随分変わってきてはいるんですけど、でもまだまだですね」と井上さんは話す。

 どうすれば女性が働きやすい労働環境を作れるのか。

女性の活躍を阻む2要素

 女性の活躍を抑えてしまう理由の一つに、「無償労働」がある。内閣府男女共同参画局によると「家庭内での家事や社会的活動といった家計の構成員や他人に対して行う対価を要求しない労働」のことを指す。この無償労働は「家事は女性が行うもの」という性別的役割分担で根付いた考えにより現在でも女性が担う事が多く、社会での活躍の妨げになっている。井上さんは家事に男性の協力を呼び掛けたり、女性がより社会に参画していけるよう働きかけたりしている。

 また続けて井上さんは女性が昇進しづらい理由として、結婚や妊娠、出産など人生の節目の長期休暇を取ってしまうと復帰がしづらいことを挙げた。長期休暇を取った場合は休んでいる間の仕事は誰かに託すことになるため、休職前と全く同じ環境での職場復帰を阻んでしまう。日本に長く根付くこの働き方の原則が長期休暇を取得しづらくする。特に非正規雇用の場合は長く休んでしまうとその間に戻る場所をなくし、退職するケースが多くなる。

 井上さんは、連合の中でも、今の組織内の課題は部署によって男女比に偏りがあることだと考える。井上さんが所属する総合政策推進局内のジェンダー平等多様性推進担当者は女性が6〜7割を占め、さらなるジェンダー平等の推進に向けていろいろな行動計画を立てて実行している。

 しかし「例えば組織局なんかは全員男性なんですよ。(連合の専従職員の)男女の割合は半々、もしくは若干女性が多いくらいなんですけど、局によって偏りがあって是正しないといけないねっていうのは行動計画に入っているんです」。毎年10月には局の編成が見直されており、連合の組織内での男女比率を等しくするよう動いているが、井上さんは「なかなか改善できていないのが現実的なところ」とこぼす。「いろんな視点が入らないとクリエイティブなことって出来ないわけですよね。従来通りでいいや(という考え)は何も変わっていかないところがあると思うんです。そこに女性や若い人、あるいはLGBTの当事者だったり障害を持った人などいろんな人が入っていくことによって仕事の仕方とか変わってくると思うんです。とくに私たちは労働組合なので、やっぱり男性中心でいろんなことが行われているっていうのは変えていこうねという所があります」。 

 内閣府男女共同参画局の「女性活躍・男女共同参画の現状と課題」(2022年9月発表)によると、「男性の方が優遇されている」と感じる人は74.1%に上る。分野別の指標では、「職場」において「平等」と感じる人はわずか30.7%しかいない。1985年に「男女雇用機会均等法」が施行されてから、日本は性別による格差廃絶の取り組みを進めてきた。「セクハラ」の禁止や、妊娠・出産による不利益取扱の禁止、労働時間見直しなど、現代にも必要な改革だ。

 しかし、事態の改善はまだまだこれからだ。井上さんは、社会に出る学生に対し「専業主婦になりたい人もいれば、しっかり働きたい人もいる。労働に対する考えや理想は自由に想像して欲しい。しかし、人生は理想通りにいかず、いろんなことが起こる。一人になっても自分の足で生きられる人になってほしい。くじけず、折れなければ転機はやってくる」と励ましの声を送った。