生理用品自販機 全て6年停止中

業者音信不通 100円専用機、商品110円に…対応できず

学生「緊急時の安心」求め稼働再開望む

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 「生理用ナプキン自動販売機の稼働を再開してほしい」。専修大学生田キャンパスに通う女子学生からこのような声が上がっている。生田キャンパスにある女子トイレのうち計5か所には生理用ナプキンの自動販売機が設置されているが、2016年秋から2023年3月現在まで6年以上稼働を停止していることが、専修大学学生生活課や同大学ブックセンターへの取材で明らかになった。ブックセンターによると自動販売機を設置しナプキンを供給する業者が2016年音信不通になったことが発端となった。大学も対策の検討を始めたものの現在稼働を再開できない理由として、「新たに発注を考えている商品の価格が1つ110円であり、100円しか投入できない今の機械と合わない」「神田キャンパスも揃えて設置したい。両キャンパスで稼働するための予算確保が必要」と説明する。一方、学生からは「緊急時の安心材料としてナプキンがすぐに手に取れる環境を整えてほしい」との声が上がっている。学生自治会も、大学側に自動販売機の稼働再開を要求した。

16年、自販機業者が突然音信不通に

 2022年10月15日に記者が確認したところ、専修大学には生田キャンパスのみ女子トイレに生理用ナプキンの自動販売機が設置されている。神田キャンパスの女子トイレには設置されていない。設置されているのは、生田キャンパス4号館2階に1台、7号館1階に1台、8号館2階に1台、9号館7階同5階に1台ずつの計5台だ。1993年、学生生活課により4号館・7号館・8号館に設置され、1997年に、竣工したばかりの9号館に購買会が2つ設置した。

 商品の受注や機械の管理は、購買会の中にある専修大学ブックセンターが行っていた。自動販売機が稼働中止となった要因は、「受注企業が音信不通になったことにある」と同ブックセンターの志村薫さん(50)は明かす。2016年秋、注文のため発注先の鈴商株式会社にブックセンターから送ったFAXに返事がない。「その後、FAXや電話で何度問い合わせても音信不通だった」という。その後、設置された自動販売機に合う商品を扱っている仕入先を見つけることができなかった。

 自動販売機は、メンテナンスも鈴商が行っていたため撤去の仕方がわからないという。そこで「故障中」との紙が貼られたまま現在も設置された状態が続く。

専修大学生田キャンパス9号館7階に設置されている生理用品の自動販売機。故障していないが「故障中です」と書かれた紙が貼られている。(2022年10月15日午後4時57分、小林未来撮影)

 2023年2月15日、記者は鈴商株式会社(本社・東京都中野区中央1丁目)のホームページに書かれている問い合わせ先で、自動販売機本体にも記載されている電話番号に電話をかけた。電話が繋がり、当該企業の電話番号で合っているか尋ねると「違います」との返事で終わった。

 2023年3月3日現在も、全ての自動販売機に「故障中」との紙が貼られ、商品を入れずに設置されている状態だ。実際に故障しているのは、9号館5階にある自動販売機1台のみ。他4台の機械を故障中としていることについて、志村さんによると「学生が間違えてお金を投入しないための対策」だという。

学生 「困っているときの安心材料 早く再開を」

 自動販売機の稼働を再開してほしいという意見が、在学生の中で上がっている。3年生の女子学生(21)は、自分の体験を説明し、「困っているときの安心材料になるから、早く再開してほしい」と望む。この女子学生はセンシティブな体験内容を話すため匿名を求めた。

 ある日の3限目の授業中、女子学生は生理がきたと気付いた。5限まで授業があり、約5時間を大学で過ごさなければならなかった。普段ならナプキンを複数枚持つよう心掛けていたが、その日は1枚しか持っておらず、「長時間の授業をしのげるか、急な不安に襲われた」と言う。授業は生田キャンパス9号館内で行われており、不安をすぐに解消する手段を考える中、同館5階のトイレに自動販売機が設置されていたことを思い出した。機械に故障中と書かれた貼り紙があったことは頭になかったため、「機械があるから買えると思って、授業終了後に急いでトイレへ行った」。故障していると確認した後、9号館から徒歩約5分の距離にある大学敷地内のセブンイレブンへ買いに行こうとしたが、オーナー交代に合わせた店舗改装工事中であることを思い出し、断念した。購買会でナプキンを販売していることは知らなかった。

 セブンイレブンが通常営業している現在は、ナプキンを買うことができる環境は自動販売機以外にも考えられるが、「校舎内のトイレに自動販売機があれば、突然の生理に焦ったときでもすぐにナプキンを手に取ることができる」と女子学生は話す。その日は友人からナプキンを1枚貰い、5限まで授業に出席することができた。女子学生は「女性にとってナプキンは必需品。だからこそ、他人からもらうときは申し訳ない気持ちになる」と言う。また、「ナプキンを貰った後日、貰った枚数分のナプキンやお菓子などを友人に渡す。自動販売機が稼働していれば、友人と互いに気を遣わなくて済む」と話す。

「値段より、すぐ手にとれる環境を」学生自治会も要求

 学生自治会も自動販売機を稼働するよう要求した。自治会は年に一度、全在学生を代表して、大学の設備や授業の運営方法などについて『六項目要求』という要求書を学生生活課を通じて大学に提出する。この要求書は毎年提出されるものであり、自治会が年に一度発行する『大河総集』に掲載される。2022年10月5日に提出した要求書では「生田校舎内で生理用品を扱う店は敷地内にセブンイレブン、購買会しかなく、突然の生理には対応できないと考える。よって、生理用ナプキンの自動販売機を女子トイレ内に設置することを要求する」と記した。資料の残っている過去5年間で、ナプキンの自動販売機についての要求が出たのは初めてだった。

 この要求を提案したのは、学生自治会執行部に所属するジャーナリズム学科2年の小林花帆さん(20)。「せっかく機械を設置しているのに、故障のままにされているのがずっと疑問だったから」という。

記者の取材に応じる専修大学学生自治会員の小林花帆さん(2023年1月16日午後4時9分、専修大学生田キャンパスで小林未来撮影)

 小林さんは、学生生活課の行う食料支援プロジェクトでのナプキン配布についても言及。学生生活課は、21年9月から22年12月にかけて計6回、新型コロナウイルスの影響で経済支援が必要な学生に対して無償で食料品などを配布した。そのうち、22年5月開催を除く計5回のプロジェクトで、女子学生1人につき1袋20枚入りのナプキンを無償で配布した。学生生活課の永島泰子課長(47)は「『生理の貧困』が社会問題として話題に上がる昨今、女子学生の支えになれば」と話す。小林さんは、無償でナプキンを提供してもらえることに「とても助かる」と話す一方、「緊急時に手元にナプキンがないというハプニングを避ける方法とは異なる」と指摘。「無料か有料かより、緊急時にナプキンが手元にあることが大切」と考えている。また小林さんは、「自動販売機が稼働したら、配慮のある素敵な大学だなと来校者に感じてもらえるのでは」と話した。

 昨年11月28日、大学側は学生自治会の要求に対し「今回の要求を受け、大学の自動販売機の規格に合う製品の購入先と故障状況等を調査しています。今後、生田・神田両キャンパスにおいて販売や無償提供などの方法も含め、必要な人が必要な時に生理用品を手に取れる環境の整備を検討していきます」と記載した回答書を自治会に渡した。自治会からの要求を受け、学生生活課は自動販売機の再稼働に向けた検討を始めた。永島課長は自動販売機で売るタイプの生理用ナプキンを扱う業者を探して新たに取り寄せ、現在設置されている機械で正常に稼働するか確認を行った。結果、9号館5階にあり故障中の1台を除く自動販売機計4台が正常に稼働することを確認した。

再開難の理由「100円しか入らない機械」「予算確保」

 では、なぜ自動販売機の稼働が今も再開されないのか。永島課長は2つの要因を挙げた。

2022年11月に学生生活課の永島泰子課長が取り寄せた、自動販売機で取り扱える商品(2023年1月24日午後3時21分、小林未来撮影)

 1つ目に、現在設置されている自動販売機に投入できるのは100円硬貨1枚のみなのに対し、機械に入れて販売できるナプキンの税込価格が110円であることだ。自動販売機で扱えることが確認できた製品は、商品1箱につき2枚の羽つきナプキンが入っており税込価格が110円だが、大学の自動販売機は、100円1枚を投入しハンドルを回すことで商品が1つ出てくる手動式の機械だ。商品を1つ買うために小銭を2枚入れることができないのだ。そのため「残り10円をどこが負担するかの議論が必要」と永島課長は言う。

 こうした製品を10円単位で価格設定できる生理用ナプキン手動式自動販売機もある。しかし、永島課長によると「自動販売機1台にかかる費用は約10万円。5つ全ての機械を買い替える費用は50万円となり、大学の財務に大きな負担がかかる」という。学生生活課としては、ナプキンの商品価格を100円に下げて稼働再開する可能性を模索している。

 2つ目に、自動販売機が生田キャンパスのトイレにのみ設置されていることだ。永島課長によると「学生生活課としては、専修大学に通う全ての女子学生が必要な時に生理用ナプキンを手にとることができるよう、生田校舎だけでなく神田校舎にも揃えて設置をしたい」という。そのため、確保が必要な予算はさらに多額になる見込みという。

大学、3つの支援策検討 課題も

 自動販売機の稼働再開の目途が立たない中、学生生活課が検討している他の支援策は3つある。

 1つ目の支援策は、ナプキンが必要なときに保健室を訪れれば無償で提供する方法だ。生田キャンパスの保健室は4号館1階、神田キャンパスの保健室は9号館の1階にある。永島課長は「保健室は学生生活課が管轄しているため、大学側の許可がなくても、学生生活課で無償で提供するナプキンの在庫を確保できればこの方法を開始できる」と言う。現在の保健室には、学生に無償で提供する分のナプキンは常備していない。永島課長によると、無償で提供するためのナプキンを確保するには、▽災害用備蓄品としての保管期間が超過したナプキンを保健室に提供する方法、▽食料支援プロジェクトで配布しなかったナプキンを保健室に提供する方法、の2つがあるという。だが、昨年12月に学生生活課が確認したところ、備蓄品から外すことのできるナプキンはない。また、食料支援プロジェクトで配布するものは育友会や校友会からの寄付金で購入したものであり、学生生活課の独断で配布することはできない。「在庫にも限りがあり、継続的に保健室に提供することは難しい」と永島課長は言う。必要な人にいつでもナプキンを提供できる環境をどう整えるかが、実現のための課題となる。

 2つ目の支援策は、ナプキンが数枚入ったかごを各女子トイレに配置して無償で学生に提供する方法だ。これは、「緊急時にすぐ手にとりたい」という学生の要望を反映する。かごを各個室に置くのか、あるトイレに限定して置くのか。「まずは試験的にやってみることで、学生がナプキンをどれだけ必要としているのかを示す1つの基準になる」と永島課長は言う。しかし、この方法では、必要としない人が自宅に沢山持ち帰ってしまうという事態も考えられる。永島課長は「必要な人に確実に手に渡るようにするには、有料化した方が良いのかもしれない」と検討する。

 「学生生活課では、なるべく無料で学生にナプキンを提供できる環境を整備したい」と永島課長は話す。

 3つめの方法として、自動販売機の稼働再開とナプキンの無料提供を両立できる策になりそうなのが、自動販売機『OiTr(オイテル)』の設置だ。運営するオイテル株式会社(本社・東京都港区虎ノ門4丁目)のウェブサイトによると、大学や商業施設を中心に全国179ヶ所で2500台設置されている(2023年3月3日現在)。各個室トイレにつき1台設置でき、自動販売機の画面に映る広告収入によって無料で提供する仕組みになっている。ただ、永島課長によるとOiTrを設置するにあたって議論すべきことが2つあるという。

 1つ目に、大学内のどこのトイレに配置するかを決める必要がある。他大学で既にOiTrの設置が行われた例を参考にすると、機械の設置にかかる工事費や稼働にかかる光熱費は大学が負担する可能性があり、多額の費用がかかる。無駄な機械にならないよう、学生の利用頻度の高いトイレを調査して設置することが求められる。

 2つ目に、OiTrの画面に映る広告の確認が必要になる。広告はOiTrの運営企業によって決められたものであり、「学生に悪影響を及ぼす広告でないか、大学側で確認すべきだ」と永島課長は言う。