InCampusのLINE通知 利用1割弱

初期不具合で告知見送り

現在は解決、利用呼び掛け

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 専修大学の教育支援・情報案内システムInCampusには、「LINEお知らせ通知」という機能が旧システムのコースパワーからの移行で新しく加わった。InCampusのページにズラリと掲載されている大学の各機関からの「個人宛のお知らせ」「科目に関するお知らせ」「個人宛以外のお知らせ」がLINE Notifyで学生のスマートフォンに届く。しかし、このお知らせ通知を設定している学生は1割に満たないことが明らかになった。VIRIDISの取材に専修大学情報科学センターが説明した。導入当初、同機能に不具合があり、告知を見送ったことが、浸透が進まない背景にある。不具合は解消済みで、情報科学センターや担当の教員らは学生が情報を確実に把握できるよう、利用を呼びかけている。コースパワーに比べ機能が拡充したInCampusと、オンライン授業のためのGoogle Classrooomそれぞれの良い部分の使い分けを推奨。Classroomは学生独自に使えるため、サークルやゼミなどの自主活動にも便利だという。

スマホのLINEに届くInCampusのお知らせ(2022年1月21日午後5時36分、東京都渋谷区)=澤康臣撮影

授業、イベント、就活、食料配布…LINEで

 情報科学センターによると、お知らせ通知にはLINEのほかメールも使え、2021年11月の取材時点でLINEのみ通知設定が1146人、メールは429人、両方へ通知設定を行っているのは173人だという。大学ウェブサイトによると、2021年5月1日時点での専修大学の学生は学部生と大学院生合わせて17319人であり、InCampusの通知機能を活用できているのは学生の一割弱となる。

 お知らせ通知が認知されていない要因があった。InCampusが開始された2021年4月に、LINEのお知らせ機能について告知がなかったことだ。専修大学ネットワーク情報学部教授兼情報科学センター長の松永賢次教授(58)は、「あまりにもお知らせ登録が多いため、システムの連携がうまくいかなかった」と話した。学生生活課や教務課、キャリア形成支援課など、大学内機関がInCampusにお知らせを投稿するにあたり、数の制限は設けられていない。各機関が登録するお知らせの数が予想をはるかに上回り、通知機能が対応出来ないという不具合があったことから、利用を呼びかけるのを見合わせたという。現在はアップデートにより、問題は解決された。

 InCampusのお知らせには、各種イベントの申し込みや就活サポートはもちろん、コロナ禍で困窮している学生向けの食料配布の案内もされている。「大学内外の情報をキャッチするために、LINEと連携して定期的に確認してほしい」と、専修大学教育開発支援委員会委員長の青木章通・経営学部教授(52)と松永教授は口をそろえた。

 「今後は、就職や学年・学部などのグルーピングや関心度が高いと判断したものを自動的に送信する、といったAIを活用した方法になるかもしれない」と松永教授は今後の進展に期待している。

 <InCampusからLINE通知の設定方法はこの記事の末尾にあります>

ログインのピークは授業開始日前後

InCampusについて説明するネットワーク情報学部兼情報科学センター長の松永賢次教授(2021年11月5日午後2時30分ごろ 専修大学生田キャンパス情報科学センター田中万智撮影

 コースパワーからInCampusへの移行は、学生にとっては急激な変化だが、2年度前から計画されたものだ。今もシステムのより良い使い方の模索が続いている。コロナ禍でオンライン授業が進んだこともあり、学生と教員のやり取りに重要な役目を果たしている。

 InCampusは、キャノンITソリューションズが販売している学習管理システムLMSだ。パソコンにインストールすることなく、ネットを通じて行うクラウド方式での運用は、専修大学が初めてだという。松永教授は、「InCampusは、専修大学において2000年代前半から始まったオンラインサーバーでの伝達手段のひとつ。LMSの機能としては、5代目になる」と解説した。こうしたシステムには寿命があり、通常7~8年で変更が行われる。この間にスマートフォンやタブレット端末といった電子機器の機能が進化し、新たなサービスも誕生するため、常に変化に対応していく必要がある。

 昨年度まで使用されていたコースパワーは、一度にログインできる数が1000人と限られ、これを超す利用が集中すればダウンのおそれがある。パソコンでなくスマートフォンからアクセスすると確認できない項目も存在した。さらに、大学シラバスには授業担当教員の連絡先が記入されていない場合に、授業の担当教員に直接連絡する機能が存在しなかった。InCampusはこの点を改善している。【時間割(LMS)】の欄から受講している授業をチェックすると【担当教員へのメッセージ】という欄がある。ここから連絡を取ることが可能だ。

 同時ログイン数の上限も3000人に広がった。年間を通してログインの回数が多いのは授業開始日の前後だという。青木教授は、「後期は現時点(11月6日)で、9月19日(日)のアクセスが最も多く、一日で25000回ほどだ」と話してくれた。今年度の後期授業開始日は9月18日(土)で、ほとんどの学生は20日から授業が始まった。こういった状況もあることから、ログイン数が増加しても対応できるように移行がされた。

「システムのいいとこどりをしよう」

専修大学教育開発支援委員会委員長を務める経営学部・青木章通教授(2021年11月5日午後2時30分ごろ 専修大学生田キャンパス情報科学センター)田中万智撮影

 新型コロナウイルスが猛威を振るい対応が模索される中、昨年度の前期は例年より一か月遅い5月に始まり、すべての授業がオンラインで行われた。専修大学はオンライン授業にあたりGoogleClassroomを使用している。専修大学が保有するGoogleClassroomは、上限が1万人であり、従来のコースパワーやInCampusと比べると桁違いの容量を持つ。さらにGoogleにはgmailを始めとしたメール機能やフォームというアンケート機能、編集権を持つ者が同時に記入を進めることが可能であるスライド、ドキュメント、スプレッドシートといった使いやすい機能が含まれている。CoursePowerにはない、オンライン授業に使用するビデオ会議システムがあったことも理由の一つだ。「Googleは非常に優れているし、新しい機能も随時更新される」と松永教授らはGoogle使用を決めた理由を説明した。

InCampusとClassroomの使い分けは教員ごと異なるのが現状だ。青木教授は、「Classroomを日常使いしている」と話した。会計学の授業も担当する青木教授は、電卓を使用する講義が多いことから、「問題の解き方などを説明した動画をClassroomのストリームに載せておけば、自分も学生も後から確認できるのでとても便利」と語った。

Classroomに掲載し、後から振り返ることができる点は松永教授も「対面でも今後活用できると思っている」と話す。ネットワーク情報学部をはじめとする演習の多い授業で、演習のペースが学生の理解度によって分かれてしまう可能性も考えられる。「(授業内容を)残しておける機能を使えば、たとえ遅れても、動画を頼りに個別で進めてもらうことができるようになった」と今後の使用も視野に入れている。しかし、Google Classroomは編集が行いやすい反面、ワンクリックで学生のデータが消えてしまう可能性があることから、「重要な期末レポートや確実に保存しておきたい提出物はInCampusへ提出してもらっている」と松永教授は使い分けている。

実は学生もClassroom作れる サークルや勉強会に

専修大学生田キャンパス情報科学センター受付(2021年11月5日午後2時30分ごろ)田中万智撮影

 「実は学生もMeetやClassroomの設定ができるようにしてあるんです」と松永教授は語る。専修大学の学生にとってクラウド上の教室の役割を果たしているClassroomは、使用権限の上で学生も教職員も全く同じ使い方ができるようになっているという。学生も独自のClassroomをつくり、参加希望者にクラスコードを配布すれば学生のコミュニティが形成できる。この松永教授の説明に、青木教授は「初めて聞いた。」と驚いた表情を見せた。一方で松永教授は、「サークルの活動をMeetで行うことはもちろん、自主的な勉強会などに大いに使ってほしい」と学生への思いを口にした。

 また、InCampusに変化したことで教職員と学生のやり取りが増えたという。「これまで、対面では聞いてこなかったような質問や要望が増えた。これまでは簡単な計算方法さえも質問されなかった。生徒が疑問点を放置することが少なくなったと思う。時間外で対応することが多くなったが、双方向のコミュニケーションは今後も大切にしたい。わからないことをわからないままで終わらせる学生が減ってほしい」と青木教授は願う。松永教授も、「自分の教えが伝わっているのか、常に自問自答している。InCampusに移行し、学生からの質問が出やすくなったことで、自分の説明不足にも気づくことができた」と話した。二人とも、今後は、ClassroomやInCampusに新たにチャット機能を登載し、授業に向けて学生とのやり取りが増えるように、一層力を入れて取り組みたいという。


InCampusからLINE通知の設定は4ステップ

InCampusの「設定」の部分から「通知用SNSアカウント」へ登録をすればLINEへお知らせを通知することができる。

【注】2月5日午後5時34分に公開した最初の版で、2枚目の松永賢次教授の写真のキャプションが誤って「松永賢司教授」となっておりました。また、青木章通教授の担当授業について「会計学の授業」とすべきところを「会計学科の授業」となっておりました。訂正いたしますとともにおわびします。(2月6日午後0時5分)