生田校舎セブンイレブン 7月30日閉店

コロナ経営難さなかオーナー死去

専大生のライフライン後継へ関係者協議

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 専修大学生田キャンパス構内にある「セブンイレブン専修大学生田校舎店」が、2021年7月30日15時をもって閉店することになった。2008年9月22日にオープンした生田キャンパス店は、13年の歴史に幕を下ろす。生田キャンパス周辺では、食品や日用品を販売する唯一の店舗で専大生にとって大切なライフラインの一つだった。専大生の多くがご飯を買ったり、コピー機を利用したりと頻繁に訪れていたセブンイレブンであり、アルバイトをする学生も多くいた。店長の木村昌裕さん(62)によると、閉店に至った理由は大きく分けてふたつ。新型コロナウィルスによる経営難とオーナー・大津和義さん(当時69)の急逝だ。学生や教職員の重要なライフラインが失われるが、大学や、学内厚生施設を運営する企業「専大センチュリー」の取材では、閉店後に同種店舗が後継できるよう関係者の協議が続いているが、明確な見通しは明らかにされていない。

コロナによる大打撃 私たちのすぐそばに

 2020年2月頃から流行した新型コロナウイルスの影響を受け、4月から始まった前期授業は全面オンラインとなった。 登校する学生は激減、これに伴って売り上げも減少した。これに先立つ1〜3月の長期休み期間も、売り上げを支えるはずだった体育会系学生がコロナ禍による部活動停止で大学を訪れなくなった。同店は5月16日から9月21日までの4か月間、休業を余儀なくされ、木村店長によると、この段階でオーナーの大津和義さんは閉店を決断したという。

 オンライン授業で生徒のキャンパス登校がなくなると知り、木村店長は、すぐにオーナーにこの件を伝えた。その際、オーナーの大津さんは電話越しに絶句していたことが、木村店長には忘れられないという。だが木村店長は閉店になるとは予想もしておらず、まもなく下された大津さんの決定に驚いたそうだ。

 大津さんが大学側に閉店の意向を伝え、閉店時期の折り合いがついたのが7月末。これにより、翌2021年3月12日に7月30日15時をもって閉店することが正式決定した。

 大津さんが急逝したのは2020年11月23日。69歳だった。木村店長は、「いつもおおらかで元気で体格も良いオーナー。亡くなってしまうまで本当にあっという間だった。もし生きていれば閉店の話は無くなったかもしれない」と話しており、セブンイレブン関係者にとって大津さんの死去は突然のことで驚いたという。オーナーの妻眞弓さんは、大津さんが所有していた2店のセブンイレブンのもう一つ、向ヶ丘遊園店は引き継ぐという。

専大生へ「感謝しかない」木村店長

 「本当に感謝しかない。たくさん足を運んでくれてどうもありがとう。」木村店長は話す。

 2010年3月より、生田校舎店の店長として勤務し始めた木村さん。生田校舎店の前は、大津さん夫婦が所有するセブンイレブン向ヶ丘遊園店に勤めていた。大学構内にあるということで、24時間営業ではなく、8時から20時30分までの営業。「酔っ払いも来ないし、礼儀正しいし、働いていて楽しかった」と思い出しながら笑顔で話した。

 実は、木村さんは専修大学とのつながりが深い。地元北海道の大学を卒業したあと、専修大学の大学院に進学。生田キャンパスにある経営学科で8年にわたり研究を続けていた。現在の学長・佐々木重人先生とも親交があり、長く通っていた専修大学生田キャンパスに再び通っていることに縁を感じていた。佐々木学長が専修大学商学部助手を務め始めた1981年、木村さんが専修大学大学院に入学。向ヶ丘遊園駅まで帰りを共にすることもあった、と懐かしむ。

 セブンイレブン閉店後は、長年働いた体を癒すべく、しばらく休養すると話した。

 現在生田校舎店では、18人が店員として勤務している。大学生は6人で、うち5人が専大生。コロナ前は大学生アルバイトが15人もいた。営業時間の短縮や休業により、アルバイトの人員も大幅に削減され、多くが退職する形をとったという。アルバイトの休業補償の案内も行った。厚生労働省が設置した休業支援金・給付金の申請の方法を提示し、アルバイトが出来ない期間の手当を確保した。苦しい思いが大きかったが、コロナ禍でも協力してくれた大学生アルバイトにも感謝していると木村店長は語った。


新たなコンビニの可能性模索

コロナ禍で調整続く

現段階で「言えることはない」

 セブンイレブン専修大学生田校舎店の閉店後、学生や教職員のライフライン維持に向け、学内厚生施設を運営する「専大センチュリー」は新たなコンビニエンスストアの開店ができないか模索している。同社はVIRIDISに対し、昨秋から店のオーナー探しに取り組み、コロナ禍で困難な調整を続けながら打開を目指していることを明らかにした上で、具体的な進捗について現段階で「言えることはない」とした。専修大学学生生活課も「具体的にはまだ何も決まっていない」とだけ述べ、専大のポータルサイト「In Campus」で明らかにするとした。学生からは「再びコンビニエンスストアができてほしい」という声が寄せられている。

 専大センチュリーは、専修大学からは独立している株式会社で、専修大学の学生や職員の福利厚生に寄与し、購買会の運営などを行っている。専大センチュリーの持つ専修大学購買会・部長代理の岡嶋紀夫さんが取材に応じたが、開口一番、「正直言えることはない」と苦しそうに語った。

 コンビニエンスストアの経営は、コンビニとオーナーで秘密協定を結ぶことになっており、決定事項が仮にあったとしてもまだ伝えられないという。その上で、これまでの流れについて説明してくれた。それによると、オーナーのセブンイレブン閉店の意向を受けて、2020年11月頃から新たなコンビニのオーナー探しが始まった。しかしコロナ禍でのオーナー探しは難航したため、専大センチュリー自体がオーナーになるべく、準備を開始した。店舗への来客数や予想される購入金額のシミュレーションを提示すること、建物の耐久性のチェックなどの審査をうける必要があり、多くの時間を費やした。利益を確実に確保する観点から、コンビニ以外のスターバックスなどのカフェの経営は厳しいとみている。

 現在は、この審査を終えた状況であるという。専大生の福利厚生を充実するためにも、早く決定させたいと岡嶋さんは話す。

 学生からは、今後への不安の声が聞かれた。セブンイレブンの常連客となっていた部活生のひとり、ボクシング部の商学部3年、青井翔星さんは「飲み物やお昼ご飯を購入するため、頻繁に利用していたので、利用できなくなると不便になります」。同じくボクシング部の商学部3年の荒巻壱成さんは「練習後に飲み物を購入したり、授業のPDFをコピーしたりしていたので利用できなくなると残念です」と話した。オンライン授業で登校が少なく閉店自体知られていないこともあるのか「(閉店を)認知していない学生がいるのに閉店してしまうなんて」(経営学部2年の相坂正憲さん)という声もあった。