LGBTQ留学生「日本の大学 多様性感じない」

英では「特別扱いもう不要」

専修大ハラスメント対策室 対応を強化

650

 2023年現在、日本における性的少数者(LGBTQ)の割合は約3%〜10%と、LGBTQの就職を支援するサイト「tokyorainbowpride」 は示している。大学という万単位の人がいる社会では、LGBTQの人たちがかなりの数暮らしていることになる。しかし全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)の2014年の研究会報告によると、当時、98%の大学にはLGBTQ学生支援の手引きがなかった。セクシュアルハラスメント防止パンフレットなどにLGBTQハラスメントを例示していない大学も約9割にのぼっていたという。海外の環境を熟知し、日本の大学に通い、LGBTQ当事者であることを明らかにしている外国人留学生5人をVIRIDISが取材したところ、そのうちの3人が「日本の大学では多様性を感じない」とそれぞれ指摘した。一方、専修大学のキャンパス・ハラスメント対策室はこうした問題に取り組み、大学の公式ウェブサイトにLGBTQをテーマにした文章を掲載し、ハラスメントに関連する2020〜21年の法改正を受け大学のハラスメント防止ガイドラインに「SOGI(性的指向・性自認)ハラスメント」の定義・事例を加えている。

いまだに議論、むしろ不思議

 「いまだにLGBTQの問題が議論されているのは不思議」というのが、中国出身でイギリスの高校に通っていた、現在名古屋大学大学院に在学するアンバー・スイさん(22歳)さんが切り出した最初の一言だった。

 アンバーさんが気になるのは、アジアでは、異性に恋愛感情を持つことを「一般的な性的指向」という言葉でよく表現すること。これはステレオタイプだと感じる。イギリスでは、どんな指向も一般的だと考えられている。「性的マイノリティに対しての気配りも、むしろ特別扱いするようなやり方は、必要ない」という。アンバーさんがイギリスに在住していた時、寮に住む6人のうち、1人がレスビアン、2人がバイセクシャルという環境で、アンバーさんを含めLGBTQの人が半数だった。「しかし日本に来て恋愛の話になると、「彼氏いる?」としか聞かれないことに違和感を感じる。ストレートしかいないような環境だ」と語った。

ネガティブな高年齢層 日伊どちらの社会にも

 イタリアから日本に留学中のアレッサンドロ・ポリオニさん(28歳)は、イタリアと比べて日本では同性カップルを見かけることが極めて少ないと感じた。「しかし同性愛やトランスジェンダーに対して年齢層の高い人はネガティブな態度を取る比率が高いということは2つの国に違いはない。極端な人に攻撃される恐怖心を持ちながら、声を上げるイタリアでの生活に慣れたが、日本に来てからは日常で極端な人を見たことがない」と、平和を感じている。

 イタリアの高校では、性的少数者だからといじめられて自殺に至る生徒もいた。そんな中で、「性的少数者のことを若者に教えることに後ろ向きな政府の干渉を無視し、教師たちは自らLGBTQに関する話題を取り上げ、生徒に平等の大事さを教える」と明かした。一方、「大学では別の世界のような自由さがあり、家庭でカミングアウトできなくても、大学の友達には平常心で言える」と、アレッサンドロさんが語った。

日本の大学 環境で大きな違い

 東京芸術大学に在学中の周博言さん(25歳)は、「学校で何の不自由も感じたことない」と語った。知り合いの半数近くが性的少数者であり、教室の日常会話で「『彼氏や彼女』いる?」と普通に聞かれる。恋愛対象を異性と決めつけていない問い方だ。東アジアとは思えない環境だと話した。

 それに対し、東京大学大学院に在学中の江雨秋さん(23歳)は、環境からのプレッシャーを感じる。工科の研究室に所属し、男性が多い環境。「懇親会で恋愛の話を全員が順番に話した際、性的指向は同性だと話したら、反応もなかった」と話し、江さんの話には興味ないかのような態度だと感じたという。「学校からLBGTQに対しての動きが一切見当たらず、環境のストレスから助けを求めたくてもどこに行けばいいのかわからない」という悩みもある。

 早稲田大学を卒業した馮佳芸さん(26)は、キャンパス内のカウンセリング室に通っていた。彼は男性として生まれ、普段は女性の身なりをし、男性に恋愛感情を持たせる。相談を求め、在学中はいつもカウンセリング室に通い、「先生たちの対応がとても優しくて、毎回同じ先生が対応してくれてとても助かった」と話した。しかしこうした問題に関する専門性は感じず、「話は聞いてくれるが、それに対してくれた言葉は内容がない」とも指摘した。

本を選んでいる馮佳芸さん(2023年9月2日、東京都中央区)鄧晶撮影

専修大学キャンハラ室「全員が平等な立場へ」

 専修大学は、ハラスメントに関連する法改正(2020年6月通称パワハラ防止法改正、2021年6月育児・介護休業法改正)に伴い、「専修大学におけるキャンパス・ハラスメントの防止等に関するガイドライン」の改正を行い、「SOGI(性的指向・性自認)ハラスメント」の定義・事例を加えた。「性的指向(Sexual Orientation) ・性自認(Gender Identity)等、性のありように関して行う不適切な言動を行うことです」と定義する。事例としては、「差別的な言動や呼称、嘲笑、からかい。「あの人、本当は男(女)なんだって」などと噂すること、周囲の理解を求めるためと言いカミングアウトを強要すること、本人の了解を得ずに本人の秘密をほかの人に伝えるなどのアウティング行為」が挙げられた。

キャンパス・ハラスメント対策室入口(2023年6月10日、川崎市多摩区の専修大学生田校舎4号館1階)鄧晶撮影

 ほかにも、LGBTQに関する対応として多目的トイレを設置し、学生の呼称を全て「さん付け」とすることを呼びかける発信もした。キャンパス・ハラスメント対策室の中川美春さん、藤原千春さんは、学生男女問わず、全て「さん」でと呼ぶことで、性別への配慮だけではなく、先生と学生の間に平等な関係性も目指したいと話した。

  室長の斎藤達哉教授(国際コミュニケーション学部)は、LGBTQの学生がハラスメントに遭った場合、性的指向に対して気を使わないといけないとの認識を示した。特別な扱いをする必要はないが、学生の考えを尊重する。「しかしそれは人によって異なる。人によって気をつけたり注意したりすることは違うけど、どんなハラスメントでも、人の尊厳を傷つけたらダメって言うのは変わらない」と説明した。

 斎藤さんは、「ハラスメントがなければ、対策室はいらない。しかし(ハラスメントが)ゼロではない限り、対策室はあったほうがいい」と述べた上で、将来、ハラスメントのないキャンパスを作りたいという目標を明かした。

 「常識」というものは常に更新され、ハラスメントの種類も時代の進歩とともに多くなる。キャンパス・ハラスメント対策室も、このことを大事にしている。室員の中川さんは、「『ちょっと寄ってみようかな』というところであってほしい。(悩みを)吐き出すことによって、すっきりしたという感覚が出てくる。頼れるところを頼るということは大事だ。一人で悩んで解決することはない。とにかく相談することは大事。そして解決するために、学生の意思を確認しながら行動する」と対策室の役割をアプローチし、「学外のことでも、学生だったらなんでも相談できる。恥ずかしく思わないように、気軽に相談できるようにしたい」と学生にメッセージを送った。