「障害あっても観戦楽しめる社会に」

車いす使用の浦和サポーター願う

国立競技場 車いす駐車場不提供問題②

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 「車いす駐車スペースがあるのに、なぜ利用できないのか」。2023年11月のルヴァン杯決勝で車いす用駐車場を「用意がない」と当初案内していた主催者のJリーグは、当事者が声を上げたことで方針を改めた。車いすユーザーの浦和レッズサポーターが投稿したSNS(交流サイト)での訴えは、2000件以上の拡散を呼んだ。VIRIDISのオンライン取材に「仲間と現地で応援することは、生きがい。障害があってもスポーツを楽しめる社会になってほしい」と願った。

「1人でいるとき、助けを呼べない」

VIRIDISのオンライン取材に応じる上野美佐穂さん(zoom画面のスクリーンショット画像)=2023年11月1日午後2時半ごろ、大森遥都撮影

 難病「脊髄性筋萎縮症」のため車いすを使う上野美佐穂(みさお)さん(49)は、30年近く浦和レッズを応援し、本拠地での試合はほとんど観戦するサポーター。10年ほど前には、東南アジアまで飛んだこともあり、2023年も浦和のJリーグ最終戦(12月)は、札幌の地で選手を鼓舞した。

 介助者なしでのトイレ利用やスマートフォン操作などが困難という上野さん。移動の車の運転は介助者が務める。「競技場近くで車から降ろしてもらって、近隣での駐車を待っていれば?」と言われたこともあるというが、難しいという。介助者は原則1人のため、上野さんだけを残して駐車しに行くことになる。「待っているときに何かあっても、その間、誰にも助けを呼べないんです」とこぼす。

ルヴァン杯と同規模、約6万人の観客が集まった天皇杯決勝の試合終了後、国立競技場を出てJR千駄ケ谷駅(奥側)に一斉に向かうサポーターたち=2023年12月9日午後5時20分、大森遥都撮影

 「抽選に外れたら、電車で行くしかないと思っていた」と上野さんは話すが、「(観客)6万人が集まるところに向かう電車に、果たして乗れるのか」という思いは今も残っている。大規模イベント時には、車いす利用者にとって移動のハードルが高い実情があるからだ。

 駅からスタジアムに向かう道には、試合の前後の時間帯には多くの人が集まり、「ものすごく怖いです」と明かす。「観客は前しか見ていないから、後ろから押し寄せてくる。車椅子の人たちは埋もれてしまいます」

 近隣のコインパーキングなどは、周辺施設の利用者も利用する。イベント開催時には多くが満車なこともあるといい、「確保されている駐車場があって、時間に合わせて行けるのが、一番安全安心なんです」と話した。 

SNSでの訴え、転載2000件超

 上野さんが、ルヴァン杯決勝で車いす用駐車場の用意がないとの案内を知ったのは、チケット購入前。すぐ主催者のJリーグに、利用できるよう問い合わせ窓口を通じて要望したが、抽選だった観戦チケットを得た後も、反応はなかったという。

 そのため、「普段はそのようには使わない」というSNS「X」(旧ツイッター)で、10月27日に「(会場には)車椅子駐車スペースが数十台分もあるのに、なぜ今回は利用できないのか」などと訴えた。投稿には2000件を超えるリポスト(転載)があり、「車椅子サポーターを排除する形は問題」などと、上野さんに賛同するポストも多数あった。

 投稿後の10月30日、Jリーグは「ご要望をいただいたため」(公式サイト)、車いす用駐車場をチケット購入者に抽選で用意する方針に変更。上野さんは「車いすユーザーではない人も、投稿を見てリポストなどのアクションを起こしてくれたおかげ」と振り返った。

「『やらざるを得なかった』が正直なところか」

ルヴァン杯決勝当日の国立競技場の車いす用駐車場(ナンバーに画像修整)=2023年11月4日午前、上野さん提供

 Jリーグは「活動方針」の中で、「障がいを持つ人も一緒に楽しめるスポーツのシステムをつくっていきます」としているが、車いす用駐車場を当初用意していなかった詳細な理由の説明はない。

 上野さんは「Jリーグは障害のある人も楽しめるように、と公言しているが対話をしようとしていない」と断じ、「結局、当事者から声が上がったから『やらざるを得なくなった』というのが、正直なところだと思う」と不信感を示した。

 そして、「何十台分も駐車場があるのに開放しない(と当初していた)のには、どんな理由があるのかを教えてほしい」と話した上で、上野さんはこう続けた。「私は重度の障害があるから、スポーツをプレーすることはほぼできませんが、応援することはできるんです。サポーター仲間と一緒に現地で応援することは、生きがいの一つ。障害があってもスポーツを楽しめる社会になってほしいです」

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