車いす駐車場あるのに「提供なし」案内

11月の国立競技場サッカー・ルヴァン杯決勝

要望受け試合5日前、提供に変更

法的義務は「設置」のみ、識者「主催者は意識高めて」

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 2023年11月にあったサッカーのルヴァンカップ決勝戦(入場者数6万1683人)で、主催するJリーグが、会場の国立競技場(東京都新宿区)には車いす用駐車場があるのに、車いすでの来場者向けの駐車場提供はないと案内していた。案内は2週間続いたが、当事者から要望があったことを理由に、試合5日前に提供することに変更した。駐車場がある国立競技場はバリアフリー法上、車いす用駐車場の「1以上」の設置が義務付けられているが、その駐車場を試合を運営する主催者らが提供することは義務になっていない。識者は、「義務でなくても車いす用駐車場を利用できる状態にすべきだ。バリアフリー対応に予算や人員を割り当てるよう主催者の意識が高まってほしい」と話した。

車いす席チケット購入者に対して「駐車場のご用意はございません」と書かれているルヴァン杯特設サイト

車いす席利用者に「駐車場のご用意はございません」

 車いす席利用者について「駐車場のご用意はございません」と案内していたのは、Jリーグ公式サイト(23年10月16日公開)やルヴァン杯特設ページ(同17日公開)内。注意事項として記していた。

 Jリーグは大会5日前の同30日夜、サイトで「車椅子駐車場の一部を車椅子席のチケットをご購入された方にご用意をさせていただきます」と案内を出し、当初の運用を変えた。理由として「車椅子駐車場の利用に関するご要望をいただきました」と記載した。Jリーグによると、要望や問い合わせはリーグに5件程度で、ほかにチケット販売会社にもあったとした。

「車椅子駐車場の一部を車椅子席のチケットをご購入された方にご用意をさせていただきます」と案内を出したJリーグ公式サイト

競技場管理団体「イベント主催者が判断」

 当初用意しなかった理由について、JリーグはVIRIDISの取材に「国立競技場は一般の方がご利用する駐車場のご用意はなく、公共交通機関のご利用の案内となっている」とメールで答えた。詳細な理由や当日の提供台数について、メールや問い合わせフォームで計3回にわたり説明を要請したが、この記事の発表段階で返答はない。

Jリーグが入る明治安田ビル=東京都千代田区丸の内で、2023年12月18日午後6時半すぎ、大森遥都撮影

 国立競技場の管理・運営を担う日本スポーツ振興センター(JSC)は、「イベント主催者には、施設の説明をする際に、車いす駐車場を含む全駐車場の案内を行っている」としながら、「実際の運用は主催者に委ねております」と回答した。

 JSCによると、イベント主催者など関係者用として305台の駐車場が地下にあり、うち23台が車いす用駐車場。

国交省「主催者において適切に対応されるべきだ」

 バリアフリー法令では、国立競技場が該当する「特別特定建築物」を新築する場合などには、バリアフリー基準への適合が義務付けられる。基準の一つとして、「不特定多数又は主に高齢者、障害者等が利用する駐車場」を設ける場合、車いす使用者用駐車スペースを「1以上」設けることが定められている。

 また、施設設置管理者の責務として、障害者らの移動がスムーズに行えるよう「必要な措置を講ずるよう努めなければならない」との条文もあるが、施設を使う主催者による「提供」について規定はない。

 国土交通省担当者は「一般論として、施設設置管理者は車いす使用者が施設を利用できるように整備・管理しておくべきであると考えている」と見解を示した。

 施設を使ってイベントを運営する主催者は「施設設置管理者ではない」としつつ、「イベント主催者において、イベントの性質等を総合的に勘案し、適切に対応されるべきものと認識している」と答えた。

国立競技場=東京都新宿区で、2023年12月9日午後4時20分、大森遥都撮影

都「車いす駐車場、有効活用されるべきだ」

 東京都のバリアフリー条例を所管する都市整備局(やさしいまちづくり推進担当)によると、都でも、車いす駐車場の提供については条例やガイドラインなどで触れられていない。

 担当者は「法や条例の趣旨を踏まえれば、整備された車いす駐車場は有効活用されるべきだ」とした上で、「どのような配慮が必要かを知らないと、施設側や主催者側は対応ができないと思う。設備が十分に活用がされるよう、普及啓発に努めていきたい」と話した。

識者「駐車場利用できる状態に。無理なら理由共有や代替提示を」

 車いす用駐車場の研究に長年取り組んでいる富山大教育学部の西館有沙(ありさ)准教授は、「車いす用駐車場を利用できる状態にすべきだ。対応できないのであれば、理由を含め情報を共有することや、近隣の駐車場を用意するなど代替の配慮を検討する必要がある」とし、「バリアフリー対応にあらかじめ予算や人員を割り当てるよう、主催者の意識が高まってほしい」と求めた。

 駐車場の提供が義務化されていないことについては、「法律があっても罰則が課されない限りは守られないケースも生じる。義務付けがなくても、『障害者等への配慮として適当』という理解のもと改善が図られることが、障害理解を促進していく上でも望ましい」と答えた。

Jリーグ、詳細理由の説明なし

 Jリーグによると、駐車場を提供する方針に変更したとの発表後、車いす席観戦チケットを持つ当事者からの駐車場利用の応募は36件あった。応募者多数のため行われた抽選の結果は、試合2日前に発表された。Jリーグは、試合当日に用意した車いす用駐車場の台数を明らかにしておらず、当初用意しなかった詳しい理由についてもサイトでの説明はない。

 ルヴァン杯は、天皇杯やJ1と並ぶサッカーの国内3大タイトルの一つ。浦和レッズ対アビスパ福岡の決勝は、福岡が2-1で勝利した。

 Jリーグとともにルヴァン杯を主催する日本サッカー協会(JFA)は、「私どもの主管ではない」(広報部)とした。


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