情報提供、安全円滑アクセスに課題

国立競技場はバリアフリーの代表目指せ

西館有沙・富山大准教授

国立競技場 車いす駐車場不提供問題③

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 今回の問題は、大きく2つの課題を示している。

西館有沙・富山大准教授(本人提供)

 1つ目は、国立競技場が発信している情報が不十分という課題だ。国立競技場のHPでは、十分な情報提供がなされていない。車いす使用者等が自家用車で来場し、駐車場を利用できるかどうか(利用可否や台数)、どうすれば利用できるか(障害者用駐車スペースまでの経路や利用料金)が分からない。ここを見れば情報が出てくるだろうと予測したところに、必要な情報が載っているべきだ。他施設では「バリアフリーページ」を設け、バリアフリー情報をまとめてアナウンスしているケースもある。

 また、同HPでは、車いす使用者が公共交通機関を利用して円滑に競技場にアクセスできるか、競技場まで車いすでアクセスできる近隣駐車場はあるか、などの情報を十分に入手することができない。例えば、都営大江戸線は国立競技場駅のバリアフリーマップを公開しており、競技場の最寄りの出口(A2)まで車いすで行けることは分かる。ただ、そこを出てから競技場までの経路がバリアフリーなのかどうかがわからない状態になっている。

 2つ目は、各種スポーツイベントの主催者のバリアフリー実現に向けたイベント運用上の課題だ。イベント時は、混雑した場所を移動することになる。車いす使用者だけでなく、転倒不安や他者との接触でけがをする心配がある人(=「交通弱者」)などへの配慮も必要になる。主催者に求められるのは、①車いす使用者等が利用できる駐車場の確保と安全・円滑な運用、②公共交通機関を利用することによる安全かつ円滑なアクセスの保障ーーをそれぞれ検討することだ。

 駐車場の確保については、その施設のみでは難しいケースもある。イベントの規模や予算にもよるが、バリアフリー環境が整う近隣の駐車場と提携し、車いす使用者等が利用できる駐車スペースを確保する方法も検討の余地がある。

 円滑なアクセスの面では、案内誘導員の確保・配置や、ゆっくり移動したい人のための通路のゾーニング(区分け)などが、検討事項になると考えられる。

 バリアフリー対応にあらかじめ予算や人員を割り当てておくことについて、各主催者の意識が高まっていくと良いと思う。また、これらの検討結果が、車いす使用者等に届くようにすることも必要だ。バリアフリー対応について検討した結果、どうしても対応できないのであれば、対応の限界についても理由を含めて情報提供することや、代替の配慮を提示することが必要だ。

 国立競技場は日本の代表的なスポーツ施設であるからこそ、バリアフリーに関する情報発信においてもモデルとなってほしい。

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